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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

みじか夜

放談哄笑、一しきりは、杯よくめぐり、談もよくはずんで、連歌などは、どうでもよいような興じ方であったが、

「夏の夜は短うおざる。余り更けては、百韻の成らぬまに、夜が明けてしまいましょう」

と、ここの院主行祐が、頃をはかって湯潰を出し、ともあれ彼方へと、用意の雅席へ、人々をうながして起った。

べつの部屋には、歌莚ができていた。各※(二の字点、1-2-22)の褥の前に、懐紙も、筥硯も、さあ名吟をたくさんお詠みなさい、とすすめぬばかりに備えられている。

紹巴や昌叱はこの道の達人である。わけて里村紹巴は、宗祇、宗長以来の聞えを当代に持っている者で、信長にも愛せられ、秀吉とも親しく、茶道では堺の宗易とは昵懇だし、顔のひろいことにおいては、無類の社交人でもある。

「さあ、殿、ひとつ御発句を……」

光秀へすすめていう。

しかし光秀はまだ懐紙に手もふれていないし、その肱は、脇息に託し、その面は、若葉時特有なそよぎを持つ庭面の闇へ向けていた。

「御執筆はどなたかの?」

紹巴は、歌の席に、場馴れている。なにくれとなく心をくばり、また席の空気を、息づまるような佗しさにさせまいとする。