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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

秀吉は舌打ちして、

「たれだ。廊下にいるのは」

「虎之助にございます」

「ああ。そちがいい。虎之助これへ来い」

「はい」

「聞いていたであろう。於市めは嫌だと申す。おまえ、代りにここにおれ。雛の客になってつかわせ」

「はい」

「よいか」

「かしこまりました」

秀吉が起ったので、市松もあわてて起った。唯々としてそこへ坐った虎之助を軽蔑するように、しり目をその背へくれて。

鷺の間は密室である。何か極秘の用談だけを訊くところとされている。山口銑蔵と松江伝介がそこへ入って慎んでいるとすぐ、

「帰ったか」

と、秀吉もすぐ座についた。

銑蔵はふところから一書を取り出して秀吉の前にさしおいた。元より二重三重に桐油紙につつんである。自身、秀吉は上紙をのぞき、また封を切って、

「ああ、久しぶりに、御筆蹟を拝む」

と、まず披くに先だって、額に押しいただいた。織田右府信長の直書であることはいうまでもない。

見終って、

「たしかに」

と、秀吉は、信長の書を、自身のふところに奉じ、それから使いの労を犒った。

「大儀であった。退って休息いたすがいい。――が、信州甲州にあるお味方は、みな赫々と戦果をあげておるか」