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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

大垣以来、一睡もしていない顔とも見えぬ。おそらく彼は人間に眠るという時間のあることを忘れているのであろう。――進めど進めど駐まろうとはいわない。夜は短く、日は長いさかりである。

日いッぱいに、越前今庄に宿営した。

先頭部隊は、なお行軍をつづけ、夜のうちに、二里余の先、脇本まで進出すべしと命ぜられ、後方部隊は、中軍からほぼ同距離の板取に駐まったから、首尾およそ四、五里にわたる夜営陣であった。

山ほととぎすの啼きぬくも知らず、秀吉はさだめし快睡に入ったことであろう。

(――明日は、府中の城下にかかるが、さしずめ、前田のひと挨拶、どう出るか、どう受けるか?)

眠りに入るまえ、当然、この宿題は、彼の脳裡にあったにちがいない。――が、茂山退陣の態度に見ても、利家の意中はある程度、仄めかされているともいえるし、それを前途の障碍として取り越し苦労に病んでいる秀吉でもなかった。

――翻って、その前田利家は、どうしていたかというに。

利家は、同日の午頃には、早やこの辺を通過し、陽もまだ高いうちに、子息利長の居城府中に、全軍を引揚げていた。

「おつつがもなく」

と、夫人は出迎え、良人は、