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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

と菊女は叫んだ。

「わたくし鵜の丸兵庫様へ、援兵を求めに行って来ます。嘉門様か五十嵐右内様が、わたくしのことを訊ねましたら……」

「さよう申すでござりましょう」

「おねがいします」

と云いすてると、菊女は横門から外へ出た。

この辺には敵はいなかった。

菊女は馬に跨がるや、兵庫の勢のいる方へ、真一文字に走らせた。

と、横門の少し向こうに、槻の木がこんもり茂っていたが、そこから二人の人影が出た。

「ありゃたしかに菊女ですぜ」

それは刃三十郎であった。

「男装はしているが菊女だねえ」

こう云ったのは梶子であった。

「萩丸様をお守りしているのが、あの菊女の筈ですがねえ、どこへ何をしに行くのだろう?」

「何をしに行こうと勝手だが、あの菊女を逃がしては、萩丸様のい場所が知れぬ。三十郎さん追っておいでよ」

「そうだ、そうしてひっ捕えよう」

三十郎は一散に、菊女の後を追っかけた。

と、梶子は横門を押し、そこから屋敷内へ入り込んだ。

梶子は屋敷内へ入り込むや、まず四辺を見廻して見た。

悲鳴!

叫喚!

矢叫び銃声!

走る者仆れる者、矢弾を抱いて駈けつける者などで、構内は文字通り戦場であった。