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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁
船中の密議
なく多忙になるだろう、遊びついでにもう少し遊ぼう、――というので大坂へ来てしまった。と、大坂の船大工の手で、紀州家の立派な御座船が出来、それが和歌山へ廻航されると聞き、
「紀州公とは特別に懇意、しかるに最近お目にかからない、この機会に行ってお目にかかろう」
こう思ってこの旨を申し入れた。
大坂表の紀州の重役は、この旨を国元へ早飛脚をもって、伝達して指図を待った。
「それは何より結構のこと、大切に守護してお連れいたすよう、船中にては余と同然、主人としてお仕えいたせ」
と頼宣卿より返辞があった。
そこで姉小路卿は船へ乗り込み、主人同様かしずかれ、大得意で航海して来たところ、例のシケでこのような島へ、寄港する運命に見舞われたのであった。
佐原嘉門が卿を見て、「意外も意外、あなた様には?」
こう云ってひどく驚いたのは、これといって深い意味はなく、姉小路卿は京都の公卿中、勤王の念最も厚い、しかも奇略縦横の珍らしいような政治家だったので、嘉門のような勤王の処士は、おおかた卿の風貌などは、以前から望見していたもので、嘉門も知っていたところから、事の意外に驚いて、そう云ったまでに過ぎないのであった。