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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

二組の男女

こう彼女は決心していた。

(その外のことはここ当分、この男のするままになっていよう)

この時三十郎は立ち上がった。

「さて菊女殿出立じゃ。……犬帰村へ参るとしよう。……窮屈ではござろうが猿轡をしますぞ」

二組の男女

途中で人々にでも逢った時、菊女に声でも立てられては大変、こう思ったので三十郎は、手ふきで菊女へ猿轡をかませ、一頭の馬へかきのせた。

それから自分も別の馬へ乗り、峠道を歩ませた。

夜ではあり山路ではあり、全く人通りがなかったので、腕を背中で縛られて、猿轡をかまされた若い女が、馬に乗せられて行く背後から、半面黒痣の浪人が、これも馬に乗ってついて行くという妖怪画めいた風景も、咎められずに過ぎて行った。

三十郎の考えといえば――

犬帰村の佐治平の家へ、梶子より先に帰って行き、黄金島の秘密を持った、素晴らしい人形の箱を奪い、菊女を連れて人知れぬ処へ、ひとまず急いで落ちついて、それから黄金島へ押し渡り、例の地図を栞として、魚屋助右衛門の遺産とかいう莫大な黄金や財宝を、自分一人で手に入れよう。……

――これ以外の何物でもなかった。

二頭の馬は男女をのせて、峠道を歩いて行く。