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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁
(よし)
と頷くとその一頭を、例の横門まで引き出して、まず萩丸を前輪の位置へのせ、自分もヒラリと飛び乗った。
とたんに萩丸の顔を蔽っていた、風呂敷が取れて顔があらわれた。
「萩丸様だ――ッ」
と喚いた者があった。
矢弾を母屋から裏門の方へ、運んでいたところの老人で、例の甚吉という老人であった。
「大変だ大変だ、変な女が萩丸様を、誘拐して行くだーッ、誘拐して行くだーッ」
しかし甚吉がそう喚いた時には、もう梶子は横門から、屋敷の外へ走り出していた。
「甚吉どうした!」
と云いながら、走り寄って来た武士があった。
嘉門と一緒に母屋にとどまり、本陣の守備にあたっていた五十嵐右内その人であった。
「五十嵐先生大変です、変な女が萩丸様を抱え、馬へのせてたった今しがた、横門から外へ! 横門から外へ!」
「ほんとか?」
と右内が叫んだ時には、つないであった馬の一頭へ、飛びのっていた時であった。
右内は横門から走り出した。
それと思われる騎馬女の姿が、犬帰村のある方角へ、一散に走らせて行くのが見えた。
「あいつだな!」
と右内は呟き、それを追って無二無三に走った。
一方刃三十郎は、菊女の後を追っかけたが、向こうは騎馬、こっちは徒歩、次第に距離がへだたって来た。