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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

へ行くのは当然だ)

ムラムラと嫉妬が起こって来た。

と同時に思われた。

(人形を鷹司家の妹君、簾子姫へ送るはいいとして、人形の胸に蔵してあったところの、黄金島についての大切な地図まで、簾子姫へ送られては大変だ)

(いや、そんなことは断じてない!)

三十郎は不意に思った。

(何んの梶子が、あの女が、黄金島のあの秘密を知って、それをムザムザ放棄して、地図を姫などへ渡すものか! ……俺の代りに、民弥と一緒に、黄金島へ押し渡り、魚屋助右衛門の遺産というやつを、発見するのに相違ない)

嫉妬と猜疑と怒りと口惜しさとが、三十郎の胸へ湧き起こった。

(あいつらに何んの人形を渡そう! あいつらに何んの地図を渡そう! ……是が非であろうと先廻りをして、人形をこっちの手へ入れてやろう! ……)

三十郎は足音を忍ばせ、菊女のいる方へ引っ返した。

二頭の馬を木から放し、その一頭に跨がって、峠の道に添いながら、林の中を大いそがしに、菊女の乗っている馬を追い追い、三十郎は犬帰村の方へ進んだ。

そんなこととは夢にも知らず、梶子と民弥とは親しそうに、話し合いながら馬首を揃え、峠の道を下って行った。