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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

このことが民弥には不思議であった。

しかし民弥は梶子の口から、三十郎が梶子と共に、小林軍右衛門や霜降小平の勢へ、加入して青塚を攻めたこと、そうして三十郎が嘉門の屋敷の、裏門から馬に乗って走り出た菊女を、戦いの最中に追っかけて行ったと、ここへ来る峠の道々で、話されて知ってはいたけれど、それにしてもあれほどの女丈夫が、ムザムザ三十郎などに捕えられたとは! ……このことが不思議に思われるのであった。梶子も民弥の後につづき、馬に飛び乗り走り出した。

一月ほどの日が経った。

瀬戸内海に点在している、大小無数の島のうち、巨大をもって称されている、風景絶佳をもって呼ばれている、××島の深林の中に、数十人の男女の者が、忙しそうに働いていた。

明暦義党の人々と、青塚郷の郷民の一部、それの合した一団であって、その中には佐原嘉門も、鵜の丸兵庫も五十嵐右内も、足洗主膳等の顔も見えた。

が、どうしたのか民弥の顔は、それらの中には見えなかった。

これらの一団は昨日の夕方、はじめてこの島へ来たのであった。

そうして今は自分たちの住居を、みんなして造っているのであった。

木を伐る者、それを削る者、杭を打つ者、柱をたてる者、地をならす者、穴を掘る者、男も女も子供も老人も、孜々としてそうして嬉しそうに、疲労を恐れずに働いていた。