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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

「決を取るの取らぬのとまどろッこしゅうござる。今夜ただちに命を奪い、一つには我らの先輩ともいうべき、慶安義挙の人々の、修羅の妄執を晴らすがよく、二には我らが義党の多数を、生け捕りいたした暴状への返報、これを致すがよろしゅうござる!」

一角は柴田三郎兵衛の、遠縁にあたる人物で、牛込藁店に神道無念流の町道場を開いている、四十に近い人物であった。

三郎兵衛は正雪の股肱として、思慮深遠智謀衆秀と、こう称されていた人物であったが、一角はむしろ情熱家で、実行力には富んでいたが、思慮にはむしろ欠けていた。

で、性急にそう云って、捕えられている萩丸の命を、今夜奪えというのであった。

一座はしばらく黙っていた。

どうやら夜風が出たと見えて、裏庭の方から戸の軋む音や、枝葉の騒ぐ音が聞こえて来た。

と、鈴木権太左衛門が、やおら膝を進めて云った。

「さようさこれは一思いに、殺してしまった方がようござろう。第一我らの眼から見た時、貴族の御曹司と申す奴、変に高慢でわがままで、何んとも虫が好きませぬ」

肺を患っている権太左衛門であった。

余命少ないと自分自身を、諦めている彼であった。