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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

それだのにご主人姉小路卿には、伊香保あたりへ湯治に行って、悠々滞在なさるという。ではこの俺もご主人について、その地へ行って滞在しなければならない。……これはどうしたことだろう)

当惑せざるを得なかった。

「では私も伊香保へ参り、当然滞在いたしませねば……」

「それがさ」

と姉小路卿は気の毒そうに、

「そういかないことになっているのさ」

「ははあ、それでは、私だけが……」

「さようさようあのお荷物を持って、やはり明後日江戸を立って、京都へ帰って貰いたいのじゃ」

(しめた)

と民弥は喜んだ。

「帰ります段ではございません。では私が一足お先に……で、あの人形箱を私が守護し……」

「さようさよう、あれを守護して、先へ帰ってもらいたいのじゃ……そうして京都へ着くと同時に、鷹司関白家へ伺候して、『老中松平伊豆守様より、簾子姫君へ献上の品物、姉小路託され持参いたしました』と、こう云うて叮嚀にお渡ししてくれ」

「かしこまりましてござります」

「実は」

と姉小路卿は人のよさそうな、好意的微笑を浮かべたが、

「お前も伊香保へわしと一緒に行って、湯治ぐらいしてもよいのだが……あの内裏雛の贈物、実は恋の進物でな。