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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

「縁側は開いて居たんだね」

平次は重ねて訊きました。

「あの娘は上気せると、雨だろうが風だろうが、閉め切ってなんか置けない性分でした、風下の雨戸を一枚開けて、枕を出して横になって居たんでしょう」

腹を立てると起きては居られない女――その激しいヒステリー性の怒りの発作が、この女を殺させる原因になったのかもしれません。「刃物は?」

平次は四方を見廻しました。其処には此女を突殺したような、鋭利な刃物などは転がって居そうもありません。

「雨が止んでから、御近所の子供衆がこれを拾って来ました、庭に捨ててあったんだそうです」

母親は四つ折の手拭に畳み込んだ匕首を一本、縁側の隅から持って来ました。無気味なものを持った手が、少し顫えて居るのも無理のないことです。「――」

手に取って見ると、よく光っては居りますが、泥と夕立に洗われながらも、血脂のべッとり浮いた、刃渡り六、七寸の、凄い匕首です。

「こいつは誰のだ。持主はわかって居るだろう」

平次は物の気配に後ろを振り向きました。其処には、平次と一緒に来た「投げ節の小三郎」が、真っ蒼になって突っ立って居るのです。「――」

「お前のだろう」