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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁
四
「御主人、この手に見覚えは?」
「一向見たことも無い字で」
「お嬢さんの手に似ちゃ居ませんか」
「飛んでも無い、お艶さんは字が上手で、町内の手習師匠の折紙付ですよ」
養子の与茂吉は憤然として答えました。
四
「お嬢さん、この手紙に覚えはありませんか」
平次の調子は穏やかですが、言葉には妥協を許さぬ劇しさがありました。
伊保木家から死骸を引取りに来る様子もなく、暫くの事件の空白を利用して、平次は急所々々に釘を打ち込む気だったのです。
主人に頼んで、問題の娘お艶を呼出してもらったのは、お勝手に近い裏の四畳半、多分それは、下女のお六の部屋でしょう。
「いえ、少しも」
お艶は肩を縮めて、自分の袖を爪さぐって居ります。少し伏目に、八五郎を讃歎させた白い額を見せて、柔らかい公卿眉と、美しい鼻筋、ほのかな唇の紅が、幾人かに恋患いをさせた魅力でしょう。
「でも、見当位はつくだろうと思うが」
「――」
「お嬢さんの手紙と思い込まなきゃ、二本差の立派な若侍が、犬潜りから這い込むような、恥曝しなことはしなかったでしょう」
平次は件の手紙を畳の上に置いて、なおも詰め寄るのでした。
「でも、私、何んにも知っては居ません」