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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

などとお菊は可笑しがるのです。

「御浪人の阿星右太五郎様は、もう四十過ぎの年配じゃないか」

隣町に住んでいる有徳の浪人者、小金などを廻して呑気に暮している中年過ぎの男が踊りの師匠のところに出入するというのは腑に落ちませんが、先刻小唄の師匠のお組が、殺されたお園を怨む者の名の中に、この浪人者を加えていたことを平次は思い出したのです。

「あの阿星右太五郎様の一人息子の右之助様は、師匠と良い仲だと言われて居りましたが、今年の春お勤めの不首尾とやらで、甲府で腹を切ったとか聞いて居ります。師匠もそれを話しては気の毒がって居りましたが」

平次もそれは薄々聴かないではありませんでしたが、お菊の口から改めて聴かされると、お園の死と何んかしら、一脈の関係がありそうにも思えるのです。

「お前はあの雷鳴のとき、何処に居たんだ」

「お向うの店先に雨宿りをして居ました。お師匠さんが怖かったんですもの、――大変な見幕で」

お組と掴み合いの喧嘩をした後の紛々たる忿怒は、全く雷鳴以上の怖ろしいものがあったに違いありません。

「お向うの唐物屋の店先から、お師匠さんの家はよく見えるわけだな」