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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁
「虎――という男です、満更の乞食じゃありません、あれでも昔は伝馬町の伊豆屋の若旦那で、虎松さんと言われた良い男の成れの果てで――」
口の隅をただらした女も、なか/\洒落たことを言います。
「あ、薄墨華魁に入れ揚げて、良い身上を棒に振ったという――」
八五郎は横から口を入れました。それは界隈に隠れもない噂の種で、若い者を戒める、年寄の一つ話にもなって居りました。
平次はチラリと見ただけですが、成程そう言えば、満更の乞食では無いらしく、身扮も自堕落ではあったにしても、そんなにひどいものでは無く、顔容も尋常、身体なども逞しくさえ見えたのです。
「あの男はチョイ/\此処へ来るのか」
平次は訊ねました。
「毎日其辺へ来てウロ/\して居ますよ、御新造の顔を、一と目でも見たいんでしょう、あんなになっても、男って本当に、身の程を知らないものですねェ」
この女も時折は、こんな一とかどの事を言うのでした。
「ところで、手代の佐太郎は何処へ行った」
「知りませんよ、私は」
「お前に徳利の酒を捨てろと言ったそうじゃないか」
「――万一、その徳利にも毒が入って居ると危ないからって言うんですもの」