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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

五

大家の主人らしい闊達さのうちにも、諦め兼ねた愁悶が太い眉を曇らせます。

「その寺小姓の顔に、見覚えは無かったでしょうな」

「飛んでもない、夢にも見覚えのない顔でしたよ。声は少し皺枯れて居りましたが、まるで絵に描いたような美しい顔で」

それがまた、憎くてたまらない様子です。

五

「殺された宗次郎は、毒茶は呑まなかったことでしょうな」

平次は変った角度から問をすすめました。

「呑まなかった様です。茶碗に口をつけましたが、そのまま下へ置いて、お小姓の後を追って、庫裡の方へ行ったようで」

「その呑み残しの茶碗の茶は」

「三輪の親分が、急須に戻して、何処かへ持って行きました。本草の学生にでも見せて、どんな毒を使ったか調べ度いということで」

それは当然な用意でした。

「お内儀とお嬢さんが、席を外されたようだから、その間に一寸伺いますが――」

三郎兵衛は「何んなりと」と言った顔を振り向けました。

「手代の宗次郎を、お嬢さんの婿にでもするような話があったことでしょうな」

「その通りですよ、親分。娘は来年は厄だから、年内に盃事だけでもさせて置き度いと、内々話を進めて居りました――どうしてそんな事が?」