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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

「そんな事が出来たのか」

「胸が悪くて叶わないということにして、江島屋の庭を唾だらけにして」

「汚いな」

「すると、効験あらたかでしたよ。今まであっしなんかには、鼻も引っかけないような、素気ない顔をして居たあの娘が、急にチヤホヤして、――お茶が入ったからちょいといらっしゃい――とか――良いお菓子がある――とか、いろ/\のことを言って、あっしを自分の部屋に誘い、結構なお茶やお菓子を御馳走した上、此節は物騒で叶わないから、戸締りを見てくれとか、格子の具合を調べてくれとか、いやもう、大変な持てようでしたよ」

「で?」

「きりょう自慢の女に逢ったら、その顔を見てやらないに限ると思いましたよ、時々つまらなそうな顔をしたり、胸が悪そうにして唾を吐くのは、なか/\きき目がありますね」

「で、何んか気の付いたことがあるのか」

「ありますよ――あの娘の顔ばかり見て居ちゃ気が付きませんが――あの手の美しいということは」

「――」

「細くてしなやかで、指が一本一本笑くぼが寄って、爪が桜貝のようだ」

「馬鹿野郎――水仕事一つしないような、怠け者の手なんか見て感服したって、何んの足しになるんだ」