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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

宗盛以下、平家が油断しぬいていたのは、まったく、後白河の施された奇計にまんまと懸ったためである。歴代、いろいろなお方もあってふしぎはないが、策謀好きな、めずらしい御性格であったものと思う。そのお方と清盛との駆引きは、歴史のあやとして観ても、人間対照の角度から見ても、興味津々たるものがある。

午後の空に雪が舞う。雪の白のために、雲間からさす太陽が光線の美を極める。

灰色の雲と、白い飛雪と、七彩の海を前に、列車は宇野駅に入る。ホームから連絡船へと、旅客の長い列が、靴音、下駄音、騒然と駆けつづく、ぼくらも、つり込まれて駆ける。旅行中には妙に、駆けるばあいが多いようだ。今のばあいは、駆けた方が寒くない。駆ける理由があって駆けている。

連絡船が程よい波濤とエンジンの震音をたててゆくころ、雪はやみ、サロンの船窓に、すぐ対岸の高松が見えてくる。明日行く予定の白峯や、屋島寺などを、眼にもとめる。四国という一陸体の全姿の上半身に、いちめん、雪雲が懸っている。今し方のチラチラは、ほんとの降雪ではなく、その雪あしが吹きこぼした“雪花”だとたれかがいう。

ぼんやり、船中の雑音にくるまれて、そこらの人々を見ていると、これまで歩いて来た志摩、伊勢、紀州のどこの地方よりも、服装もよく、生活弾力ももっている。