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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

線上閱讀中村 清太郎《ある偃松の独白(あるはいまつのどくはく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 頁

青空文庫

九 ひるの夢

そういう力強い声が、どこからともなく響いて来るのを覚えて、俺はようやくのこと、気をとりなおした。俺はできるだけ、彼を力づけなければならぬ。そして彼のような殊勝な魂を通して、人間にも広く知己を求めたい――という気持ちになって行った。

いっしょに画に入ったまわりの仲間も、さすがにそれぞれ感動の色を浮べて、何かと語り合っている、その中に、俺のうしろ楯である立岩さんが、持ち前の重い口を、やおら開くと、

「なァ、下がり松さんよ……あんたのお蔭で、今度はこのわしまでが、面目をほどこしましたワイ……」

と、荒ら膚を熱くして言い出したのは、俺の感慨をいっそう大きく揺り立てて、小さい時からの彼の庇護、それを恩にも着せない彼の大度……胸のつまった俺は、かえってはかばかしい返事ができなかったくらいだ。

そこへ星鴉さんの報らせで、老画家が尾根道に休んでいるのを、偃松の中の低い白檜の梢から覗いてみると、手帳に何か書きつけては、小声でこう繰り返していたそうな。

偃松の露ゆりこぼす別れかな

九 ひるの夢

俺はあらためて人間の事を考えてみた。人間は俺たちと違って、はるかに複雑で霊妙な生物だけに、なかなか俺なぞには解らぬ節が多く、その上、一口に人間と言っても、千差万別には違いないけれど、概観すれば、彼らは非常に賢くて、真理や美というものを、