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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁
ちょうど、小五がいましたよ」
「ほう、どこに」
「ほれ、あんなところに」
小七が指さすところを見ると、なるほど、いま橋袂から降りてきた一人の男が、舟のもやいを解きかけている。
手頸に提げたのは、どうも、縄を通した二タ差しの銅銭らしい。
どこか殺気のただよう眉間は、ばくち窶れのせいだけでなく、異名も、短命二郎といわれているほどだから、独自な人相というものだろう。喧嘩に俊敏なのは、その尖り肩や脛の長さでも察しられ、ボロの漁着の胸もとからは、青ずんだ豹の刺青が見え、その凄味を消すよりは、むしろ増すかのように、頭上斜めにかぶった刺子頭巾の横鬢に、一枝の柘榴の花を挿していた。
相見ながら、漕ぎ近づくと、
「よう小五さん」――呉学人から、声をかけた。
「どうです、いい目が吹いてきそうかね」
「誰かと思ったら……」と、小五はやっと、怪訝顔を解いて笑い出した。
「――先生たあ、思わなかった。さっきから、あの橋の上で、見てたんだがね。どこへ行くんだ、小二哥い」
「この先の旗亭よ。来ねえかい」
「橋際にもあるぜ。妓もいるし」
「いや先生の馳走には、妓よりは風景だろ。これから夕陽が沈む頃あいまで、芦と水と、帰る帆と、それからあの梁山泊の山々が、紅い瑠璃色からだんだん紫色になっていったり、おれたちでも、恍惚するほどな景色に変る。