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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁
「いやもう充分いただきましたよ。海闍梨さま。これはいったい何という御酒で」
「山門自醸の銘酒でございますが」
「……道理で。こんな美味いお酒はついぞ飲んだことがありませぬわい」
「ホ、ホ、ホ。いいんですか、そんなに召上っても」
「巧雲。まアおまえも、一ト口いただいてごらんよ」
「いえ」と、如海はべつな銚子を取って。「奥さまには、こっちのを差上げましょう。お弱いご婦人にはこの方が」
「ま。……酌いでくださいますの。もったいないこと」
そろそろ巧雲の沸る思いは姿態にもなって、眼もともとろり、肌の凝脂も匂い立つ。
淫僧、裴如海のこころもそこは同じ焦々だったに違いない。いつぞやの晩はむなしい交唇だけで別れたこと。今日こそはの機会を外すわけはなかった。さればこそ潘爺さんの酒へは微量な眠り薬を混じ、巧雲へすすめたお銚子のものへは媚薬を入れてあったのだ。薬法もまた仏家でいう“未見真実”なら、色坊主が女体開眼の方便として用いるのもまた、彼らには、いわゆる女人済度の慈悲のひとつか。
「ま。嫌アねえ、おじいさんは。……すっかりいただき過ぎたとみえ、よだれを垂らしてしまって」
「奥さま。