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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
将の信念は、兵にのりうつる。炎をこぐり、黒煙のなかを駈けて、寄手の兵は、信長の信念をそのまま遂行した。
八千の僧はみなごろしにされた。阿鼻叫喚は谺した。谷間へ這い下り、洞にかくれ、木へ逃げ登りなどした山徒も、稲の害虫をころすように狩りつくされた。
自分の大英断と、部下の大猛烈と、ふたつの合致からここに現出された未曾有な光景を、その夜、夜半頃には、信長も自身、山上へのぼって来て、まざまざと眼に見ていた。
叡山側は、誤算していた。
かれらはその夕方まで、信長の大軍をふもとに見ても、
「物々しき虚勢ではある」
と、多寡をくくっていた。
そしてまた、
「いまに慌てふためいて、総勢、退軍しはじめるから、そこを追い討ちすればよい」
と、晏如としていた。
そういう心理にはどうしてなったかといえば、山から遠くない京都から、かれらを安心させるような情報が頻々と、山徒の本陣へ来ていたからであった。
京都といえば、いうまでもなく、そこにいる将軍義昭の府のことである。叡山は諸国の僧侶や信徒にとって、もっとも顕著な反信長の本山であるが、その叡山に、裏から兵糧を送り、武器を与え、間断なく、煽動と督戦に努めているものは、義昭そのものであった。