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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

それに対して。

遅いにも程があるが、猛火のさかんな真夜半頃となって、恐怖と狼狽の底に捲き堕された叡山の代表者は、信長の陣へ使いをたてて、

「いかなる莫大な償金なりともさし出しまする。また、いかなる条件にもきっと服しますれば」

と、和議をいって来たが、信長は一笑を見せただけで、

「答えには及ばん。その僧どもも斬りすてろ」

と、鷹へ投餌をやるように、左右の者へ云い放った。

僧徒の使いは、二度も来た。二度目の使いは、信長のすがたを拝んで、

「……お慈悲に」

と、まで叫びながら合掌したが、信長は、

「ならん!」

首を振った。

そして即座にまた、使いの僧を斬らせてしまった。

夜が明けた。

叡山は、余煙と、灰と、黒い枯木と、峰谷々まで、さまざまな断末のすがたをした死骸で埋まっていた。

「――このなかには、一世の碩学も、大智識も、未来ある若僧もいたろうに」

ゆうべ殺戮の先鋒となった明智光秀も、今朝は余煙のなかに立って、面をおおい、胸のいたみを覚えた。

その光秀は、その日、

「志賀一郡はそちにあずける。以後、ふもとの坂本城に住め」

と、いう信長の恩命に接した。

信長は、一日措くとすぐ山を降って、京都へはいった。