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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「お待ちなされておらるる。――あれへお通りあるがよい」

と、指さした。

兄も一緒に来てくれるのかと思っていると、雑兵を呼んで何かいいつけたりなどしてかまってくれない。

彼女は、一人、怖々と陣幕の路地を通って行った。

すると、於ゆうが来たために、退けられた人々であろう。蜂須賀彦右衛門や堀尾茂助や、福島市松、加藤虎之助などの小姓たちまでが、相次いで、そこから四方へ出て行った。

何かその人々へ、すまないような気もして、彼女はなお、幕の蔭に佇んでいた。――と、藤吉郎は幕を払って、

「オオ。於ゆうか。なぜ黙って、そんな所に立っておる。さあ、はいれ、はいれ」

と、手を把って中へ抱え入れた。

何の憚りも屈託も彼にはない。藤吉郎は、彼女のやや小麦色に陽焦けした顔をのぞきこんで、

「よう来たな。……道中、敵におそわれなかったか。留守中は、淋しいことであろう。体も、別条ないか」

と、まったく甘い。

用ありげな小姓の一人が、何気なく、ひょいと幕を上げてはいりかけたが、小姓でさえ、顔を赤くして、あわてて引退ってしまった。

「於ゆう。それへ休め」

「はい」

「半兵衛より仔細は聞いたであろうな」