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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
と、主戦論をとって動かなかった。
浜松から北へおよそ十町。横二里、縦三里に余る高原に出会う。
三方ヶ原であった。
高原を二つに割って縦走している断層がある。深さ十八尺もあろう崖をのぞく、清冽な水がながれている。そこを犀ヶ崖という。
二十二日の未明、浜松を出た家康の軍は、犀ヶ崖の北に陣をしいて、武田勢がさしかかるのを待っていた。
「いかがなされたのやら。……こんどの御陣に限って」
軍目附の鳥居忠広は、陣地で出会った石川数正をとらえて、痛嘆していた。
「何をお憂いなされておるか。御合戦のさきにあたって」
「いや、常には、われわれの血気をお叱りなるとも、先へ逸るようなことはない殿が、こんどばかりは、初めから誰よりも烈しく攻勢を主張しておられる。……何となく、すでに御心中、玉砕をお覚悟されているように思われての」
「む、む。……だが、この期になっては、名を惜しむか、恥を負うかだ。殿が名を惜しまれての御決意はさすがではある。わしたちはよい主君を持った。そう思われぬか」
「常々、そうありがたく思えばこそ、おたがい永の困苦をも困苦とせず、艱難を楽しみとして、これまでお家を護り合って来た。