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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
そして、
「小山田の物見も、われわれの偵察も、お答えは同様にござりまする。天機は今まさに、めったにない幸いを、お味方へさずけておるように存ぜられます」
と、復命した。
「ウム、そうか」
太い声が出る。信玄のかぶとの白毛が、しきりと前後に振りうごき、次々と、その太い声から左右の将に命令が発しられた。
――貝が鳴る。
二万数千の先鋒から末端までその貝の音がきこえ渡ると、たちまちそれまでの行軍序列はドドドドと地鳴りしてくずれ立ち――くずれたかと見るまにまた、魚鱗を組んで、いっせいに押太鼓を打ちながら徳川陣の側へ迫って行った。
これは合戦後の余談に属することではあるが。
その時の迅速な陣替ばかりでなく、総じて甲州勢の大兵が、信玄の指揮ひとつで、実にあざやかに動くのを見て、家康はあとで、敵ながら実に見事であったと嘆賞して、
(自分も兵家に生れた名聞に、信玄ほどな年になったら、いちどは信玄のように大兵を自由にうごかしてみたいものだ。――あの総帥ぶりを見ては、たとえ今、信玄を毒をもってなら殺せるといわれても、鴆毒では殺したくない)
と、ひとに語ったそうである。
それほどに、信玄の采配は、敵の大将をさえ感銘させる神変をもっていた。