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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

思いがけなく味方の将たちであったから、兵は悲壮なさけびを、歓呼にかえて、太刀をふりあげ、槍をさしあげて、迎え入れた。

――その影の、一騎、二騎、五騎、七騎とつづいて来る第八番目に、家康が、鎧の片袖もちぎられ、雪や朱にまみれた姿で、駈けつづいて来た。

見るやいな、木戸の将士は、

「殿だッ、殿だッ」

「御無事だったぞうッ――」

伝えあい伝え合い、われを忘れて、躍りあがった。声かぎり歓声をあげた。

それのみか。

すがたこそ、惨憺には見えるが、思いのほか、家康がにこにこしているのをながめて、半狂乱になっていた将兵たちも、ひどく安心して、その後はおのずから秩序づいた。

家康主従二十騎ほどは、城下の辻に、駒を立てて、まだ後から続いて来るらしい部下を待っていた。

追いかけて来た甲州の山県勢へ小返りして、さんざんに打ち戦い、もうよい頃と、ひと足あとから城下へはいって来たのは、一隊四十人の槍組だった。

その四十人は、二十七人に討ち減らされていた。中のひとり高木九助が、槍のさきに、敵の坊主首をさし貫いて帰って来たのを、家康は遠くから見て、

「九助、九助」

と、さしまねいた。