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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
「……はい。お見しりおきくださいませ。兄重治へも、お眼かけていただきました。妹のゆうと申しまする」
かすかな声ほど美しい。
信長は、ながめ入って、感心していた。
その意味を、藤吉郎にすこし揶揄してやりたいような気もちがうごいたが、罪な気がして、
「半兵衛は、その後、健在かの」
と、まじめになる。
「久しく、兄とは会いませぬ。戦陣のせわしさに……便りのみは折々にございますが」
「今、そなたは、どこに身を置いておるか」
「すこしばかり所縁の者がおりますので、不破の長亭軒のお城に身をよせております」
「そうか、なるほど、あれには樋口三郎兵衛が今もおったな」
なるほど――と、いって、特に藤吉郎の顔を見る。彼のその方の才を称揚している微笑だった。
藤吉郎は、すこしてれて、
「時にまだ、渡辺天蔵は、もどりませぬかな」
わざと、とんちんかんをいう。これが曲者である。信長はその手はくわない。
「なにをいう、うろたえて。天蔵の帰りは、三日目ぐらいと、昨夜、自分でいうたばかりでないか」
「なにさま」
藤吉郎の面がひどく赤くなる。信長は、これで気がすんだらしい。――彼が羞恥んで困るのをさっきから見たかったのである。