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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

そちの策は」

「わざと一方の囲みを解いて、将軍の逃げ途を設けてやるのです。他国へ落ちて行かれるように」

「将来の厄介ものになりはせぬか。またぞろ、地方の武力や野心の徒に利用されると」

「いや人心は次第に義昭という人物へ、あいそをつかして行くでしょう。それが自然に分ってまいれば、将軍家が中央から追われたのも、やむを得ない成り行きと納得し、信長の処置も、正しかったのであると得心いたしましょう」

――その夕方からである。

包囲軍は、囲みの一方を解いて兵の手薄を見せた。

第内の公方軍は、

(計略だろう?)

と、疑っているらしく、夜半までなんの行動にも出て来なかったが、雨の小やみになった明けがた近く、突忽として、一隊の兵馬が、濠橋を渡って、洛外に逃げていった。

「たしかにその中に、将軍家が混じっていたようです」

報告があると、信長は、

「そうか、空家になったか。空家を攻めても効はないが、歴世十何代、足利義昭にいたって、将軍家はみずから職を抛って遁亡した。室町幕府はここに終りを告げた。一攻め押して、鬨の声をあげろ。足利十五代の悪政のあとを弔うてやれ」

と、暁の陣前へ出て云った。