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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「いやこの酒もうまく飲めねばならぬはずだ。こういう間も人間の修行になろう。死んでゆくもの、生きのこる者、その差はどれほどか。一瞬ともいえるだろう。……長い長い、幾千年の時の流れから大観すれば」

彼は、強いて、からからと打ち笑うような気を持とうと努めた。

しかしふくむたびに、酒は心腸に冷たく沁みる。

どこかで、しゅくしゅくと、すすりなくのが、身にせまるような心地がする。

お市の方の泣き悲しむ様や、長政の面や、幼児たちの無心なすがたや――どうも奥の様子が想像されてならなかった。

元来が、彼は多分に痴愚な男である。その痴愚が働きだすと、ひと事ながら、声をあげて泣きたい気もちがしてきた。

「……もし自分が、浅井長政の身であったら」

などと、思い遣ったりした。

ところが、そう考えてから、ひどく気がからりとして来た。つねに妻の寧子にいい渡してある遺言を思い合わせたからである。

――もののふの常。

いつどこの戦野で果てるかもわからない。

おれが、討死したら。

そなたは、他家へ嫁げ。そなたが三十まえであったらば。

が。年三十をこえると、色香はとぼしい。従って良縁のさきも狭い。