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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「城内から、お市の方様、また小さい和子様たち、お幾人も背にしばって、浅井家の傅人三、四名の衆とごいっしょに……」

「えッ……」

信長は、身を揺すぶった。

「――相違ないか。見たのか、その方は」

「われわれどもの人数で、途中からお守り申しあげ、はや、焼け落ちる御城門を、驀しぐらに外まで駈け出しました。どなたも、いたくお疲れのていゆえ、安全なところで、しばしお水などさしあげておりまする」

「……ううむ、そうか」

「そのあいだ、寸刻たりとも、わが君におかれては、御痛念にちがいない、先へお触れ申しあげい――と、主人藤吉郎のいいつけによって、いそいで駈け参りました」

「そうか。ああ」

と、信長はなお口のうちでくりかえして――

「して、その方は、藤吉郎の家中で、なんという者か」

「小姓頭、堀尾茂助にございまする」

「ゆき届いた使い、大儀であった。しばし休め」

「ありがとう存じますが、いまなお合戦のまっ最中、御用のすみました上は」

と、茂助はすぐあとへ取って返し、遠い武者声のなかへ駈けこんで行った。

「まったくの……天佑じゃ」

信長のわきで、誰か、ふとい息と一しょに呟いた。柴田勝家であった。