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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
松永、三好、これは蝿です。蝿のたかりやすい腐れ物はいくらも存在していますが、所詮、亡んでゆく性質のもの。ただ始末の悪いのは、本願寺門徒の諸山の僧侶ですが、これとてもまだわが君を恐れさせるほどのものではございますまい。……と、すればただ一つ、恐いものが残っておりますな)
(何だ。いうてみい)
(敵でもなし、味方でもなし、尊敬はしなければならないし、尊敬してのみいれば立ち所に陥し入れられる――両面の化け物殿――いや失言いたしました。将軍家ではございませぬか)
(ウむ。いうなよ、誰にも)
信長の悩みは、実にその敵でもない味方でもない人であった。彼が上洛した日にも、辻には、その幻の敵の為す業らしいものを見た。それは暗に彼の悪政を歌った落首の立て札であった。
蝿のように三好の残党がする悪戯の一つにちがいない。
落首の立て札にはこんなことが書いてあった。
ながらへば
また信長や偲ばれん
憂しと三好ぞ
今は恋しき
卑屈な落首の作者は、暗に信長の革新政治を弥次っているが、それは彼らの不平だけで、民衆の心を代表してはいなかった。
その証拠には、立て札に足を止める往来の人々も、一応は面白半分に見ているが、笛吹けど踊らずで、苦笑しながら通ってしまう。