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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

叡山

光秀はおらぬかッ。光秀、戦場なれば、急いで、これへ呼びもどせ。――光秀を呼べッ」

叡山

三井寺は、その山門も坊舎も、聯合軍の旌旗につつまれていた。

ここを本陣として。

浅井、朝倉の主将たちは、きのうは信長の弟九郎信治の首を、大勢の眼で、実検した。

また、次々と。

青池駿河守、道家清十郎、森三左衛門可成、そのほか織田家の名ある士たちの首級を、飽き飽きするほど、検分した。

「姉川の敗北も、これで雪辱したというもの。幾らか、胸がはれた」

一名が、つぶやくと、

「いやまだ、信長の首を見ぬうちは!」

誰かが強く叫んだ。

すると、北国訛の濁み声で、

「あははは。見たも同じよ。その信長も、前には難波の石山、三好勢。うしろには、この大軍。どこへ逃げ得よう。――網の魚だわ」

半日も、無数の首級を検分して、誰もが血臭いにおいに附きまとわれてならなかったとみえる。夜に入ると陣の幕舎には酒瓶が持ちこまれ、勝軍の気を昂げる心も手伝って、兵に、酒を汲ませながら、

「京にはいるか。止まって、大津の咽喉を抑え、徐々、包囲をちぢめて網の大魚を完全に捕るか」

と、飲みながら軍議に移っていた。