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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「義昭将軍こそ、痛し痒し、さだめし物憂い顔しておろう」

信長は、その顔つきを想像して、何か、おかしくなった。

「や。あれへ来る兵船は、何者か」

湖水をふり向いて信長が訊ねていると、やがて、

「木下藤吉郎殿、横山城の御人数のうち、七百を割いて、湖を押し渡って、御加勢に馳せつけられました」

と、注進があった。

間もなく、藤吉郎は、船から上がるとすぐ、陣地へ登って来た。留守は、竹中重治一人あれば足るという。信長は、よく来たともいわなかったが、不機嫌ではなかった。

十月にはいった。

十月の半ばもすぎた。

いつもの信長の戦法とちがって包囲陣は、動かなかった。――山上に籠った浅井、朝倉、僧兵の聯合勢は、やっと気がついた。

「しまった! 敵は根気よく糧道を断って、われわれを乾干しにする作戦だ」

もう間に合わなかった。山上の穀倉は二万余の大兵で食うのでまたたく間に空になった。木の皮まで喰いはじめた。

十一月となる――

山上の寒気に、またべつな苦痛が襲って来た。藤吉郎は、かねての献策を、信長へ促して、

「もうよい頃でしょう」

と、囁いた。

稲葉一鉄が呼ばれて来た。信長の旨をうけて、彼は従卒四、五人を連れただけで叡山へ、そして、僧兵の本陣である根本中堂で、西塔の尊林坊と会見した。