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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「御和睦の直後というのに、卑怯な策謀、蹴ちらして、眼にもの見せねば」

眼に彼方の炎をにらみ、歯に唇をかんで、藤吉郎の命令一下をまちかまえた。

「……なるほど」

駒の背から藤吉郎も火の手を見ていたが、やがて洩らした声は、至極悠長な――なるほど――であった。

「躁ぐな」

まず、うしろへ向っていった。

「わが横山には、小城なりとはいえ、留守として、蜂須賀彦右衛門がおる。半兵衛の弟竹中久作もおる。多士済々だ。やわか、あれしきの火の手に陥ちよう」

暗い山風のなかで、からからと笑い声が聞えた。

つづいて、天蔵天蔵と呼ぶ声がする。はッと、渡辺天蔵が列からぬけて、彼の馬前にひざまずく。

「物見して来い」

「はッ」

一個の影が飛んでゆくと、藤吉郎はまた、

「新七はおるか」

と、騎馬の中を見まわした。

「これに!」

青山新七が高く答える。

「そちも行け。そちは馬のままがいい」

「心得ました」

青山新七は、馬のしりに一鞭あてて駈けて行った。

次々に六、七名を放った。

それらの面々が、やがてすぐ物見から帰って来ての報告を綜合すると、ほぼ敵方の実体と、火の手の程度がわかった。

人々の想像はちがわない。