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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「どうだった?」

床几を立って、藤吉郎は、両方の手でふたりの肩を抱きよせた。

「――戦は恐いか」

「う、う、ん」

虎之助は、首を振った。

市松は、あわてて下にひざまずいて、

「すこしも恐ろしいことなどございません。どうか私にも、あれへ行って、戦うことをおゆるし下さいまし」

と、願った。

「はははは。何をいうか。もう戦は終っている。わからぬか、敵はくずれて八方へ逃げ出している」

すぐ丘の下あたりだった。

ざ、ざ、ざッと枯草を鳴らして、二、三名の敵が逃げて来た。そして藤吉郎がいるのも知らず、この丘へ上って来ようとすると、きゃッ――と、悲鳴をあげた者があった。

敗走兵はおどろいて、横ッとびに道を変えて逃げ去った。藤吉郎は、その悲鳴に思い出して、

「茶わん屋の於福はいかがいたしたろう。途中から連れて来たあの意気地ない人夫だ。ふたりで探して来い」

と、市松と虎之助にいいつけた。

「はいッ」

ふたりとも、勇躍して、丘を駈け下りて行った。

この戦なかに、戦の外にいて、ただ傍観していたのは、実はつまらなかったし、子ども心にも、すまない気がしていたのであろう。

こんな際には、用の端でも、何かしたい。