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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
――俄かに房を騒がせぬためじゃ。そちは明夜まで山上に留まっておるがよかろう」
さきには、京都の紹巴に招き状を送り、いまは愛宕の参籠を先触れさせていた。彼は、天の味方を信じながら、天の眼をあざむくことに、自己の聡明を駆使していた。
列は、桂川を渡り、松尾の間道をこえ、その夕方、陽もとっぷり暮れたころ、亀山の本城へ着いた。
城主の帰国を知った亀山の町民は、夜空も染まるほど篝火に祝いの心を見せていた。事実ここの領民は旧国主の波多野氏時代よりも、いまの善政に悦服し、光秀の徳になついていた。
おまえ見たかや
おしろの庭は
いつも桔梗の
花が咲く
こんな民土の謡が興ったのも、正に明智領になってからである。こよいも濠をこえ、狭間をこえて、城下の謡が本丸まで聞えていた。
「長々の留守居、ご苦労であった。光秀もまずかくの通り健在、歓んでおくりゃれ」
彼は城中に入るとすぐ、大広間を用いて、斎藤内蔵助以下、多くの留守居衆に謁を与え、各※(二の字点、1-2-22)から挨拶をうけて後、初めて奥曲輪に入った。
何十万石という住居はあっても、賑やかな家族はいても、戦国の武将はひとり光秀のみでなく、誰もひとしく、家庭に帰って楽しむような日は、一年のうちに指折るほどしかなかった。