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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
だが、ふたたびここを立つと全軍の歩みはわき目もせず真っ直ぐに塚原へ降り、川島村へ出で、すでにして眼の前には、全軍おおかたの将士にとっては、真に思いもかけなかった桂川のながれを四更の空の下に見ていた。
「あ、桂川だ」
「桂川?」
俄然、士卒は譟ぎ始めた。こう来ればこう出る当然な歩みをして来ながら、われにもあらぬ眼をみはって、一颯、冷風に吹かれるや否、惣勢足なみを竦み止めた。
「しずまれっ」
「立ち譟ぐな。濫りに私語するな」
馬上の物頭幾名かが、動揺の見えた全軍に大呼しつつ駈け繞る。
水明りに、また川風に、水色桔梗の九本旗は長竿を弓となすばかり、はためき鳴った。
「源右衛門、源右衛門」
騎馬の一将が高々と手を挙げて呼びぬいている。一隊の部将として右翼の端のほうにいた天野源右衛門は、お召しと感じたので、馬を隊伍の中へおいて此方へ駈けて来た。
光秀は河原に立っていた。
炯々たる幕将たちの眼もとは源右衛門へ注がれた。霜鬢白き斎藤内蔵助の面、ほとんど仮面かとも見えるほど悲壮な気稟をおびている左馬介光春の顔。諏訪飛騨守、御牧三左衛門、荒木山城守、四方田但馬守、村上和泉守、三宅式部、そのほか幹部たちの夥しい甲冑の影が幾重にも光秀を囲んで、鉄桶のごときものを作っていた。