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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

そのうち急にひそとなった。小旗のわきにすえてあった床几へ秀吉の姿が倚ったからである。小姓、旗本などが左右にわかれて厳かに控える。人夫達から日頃、憎悪の的になっているちんばの鬼武者黒田官兵衛は、すこし離れた所に、竹の杖をついて立っている。

やがて、その官兵衛が、堤の上から数千人のうえへ、大声で告げた。

「筑前守様の御上意で、きょうはお前たちの所存を訊いてやれとのお言葉だ。かねて汝らも知るがごとく、築堤の日限ははや半ばをすぎておる。然るに、工事は遅々として進まない。その原因は、一にお前がたが業に対して、死力をふるい出していないからだと、筑前守様は仰せられる。――そこでだ。一体お前がたの間には、どういう不満があるのか、何が不足なのか、どうしてくれと望むのか、それを忌憚なく、きょうは訊いてつかわすためにこれへ集合を命じた次第である」

「…………」

官兵衛はしばらくここで舌を休めながら、数千の頭をながめていた。所々の頭と頭が、何かささやき合っている。明らかに全体も動揺している。眼と眼を見あわして。

「組々の親方どもは、人夫達の気もちを充分に弁えておるであろう。