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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁
と柏手を打つのです。
おとくい先のお妾にちょっかいを出すのと、お月様を拝むのとは、全く別な人格と意図とに出ることで、一緒にやらかしても一向良心に恥じないのが、この時代の市井人のモラルでした。
わけても、佐太郎は、四十過ぎの分別者のくせに、良い男で浮気者でもあったのです。
「お月様は明日の晩も出るよ、――さア、親方の好きな熱いのが来たぜ」
万兵衛は後ろから声をかけました。西に残る夕映えと、東から昇る月の光をたよりに、まだ灯は点けませんが、お常と佐太郎の如何わしい態度は、酔った万兵衛からもよく見えます。
「ヘエ、相済みません。せっかくの十三夜だから、揚幕から出たお月様を褒めてあげなきゃ」
佐太郎はそんな下らない洒落をいいながら、席に戻って杯を挙げます。
「私は知っての通り酒が弱いから、とても親方と付き合っちゃ行けない、――ちょいと横になるから」
二本目の徳利から、一口呑みかけた猪口を下において、万兵衛はお常の膝を引き寄せて横になりました。
五十を越したばかり、痩せて骨張ってはおりますが、精力的で金儲けが上手で、一代に江戸でも何番といわれた富を築いただけの強かさがあります。