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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁

青空文庫

三

「なア、八。お前が行って持前の鼻をきかせるがいい」

「幇間医者をうんと脅かしてみましょうか」

八五郎はスタートに並んだ競馬馬のように弾みきっております。

「そいつはお前の手には了えまいよ。それより板倉屋の内輪のことを調べてみるが宜い。その妾のお常の身持、番頭忠助の評判、養子の幸吉と主人万兵衛の仲など、気になることがあったら、とことんまで調べ抜くのだ。どうかすると、悪者は主人万兵衛を殺す気でやったことかも知れない。棟梁にも毒酒を呑ませたのは、なんかの誤魔化しかも知れないじゃないか、――幸い主人万兵衛は、酒が弱いので助かったということもあるだろう」

平次のコーチはさすがに行届きます。

お萩はこれ以上平次に頼むこともならず、お静に慰められて、しおしおと帰って行きます。涙が乾いて、興奮が納まると、青白く引緊った顔が、江戸娘らしいきかん気を匂わせて、多い髪も、赤い唇も、なかなかの魅力です。

「それじゃ、行って来ますよ親分」

その後ろから、懐ろを十手で突っ張らせた八五郎、照れ臭そうでもあり、嬉しそうでもあります。

三

「親分、困ったことになりましたよ」

あの張り切って深川へ出向いた八五郎が、ぼんやり戻って来たのは、それから三日目の昼頃でした。