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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁

青空文庫

三

「言い出した喜三郎が騒ぎ出し、二十人ほど狩り出して出かけると件の通りだ、太之助は茶の木稲荷の神前へ泡を吹いて倒れている。こいつは洒落にもなりませんや、お蔭で若い衆から集めた三百文と酒一升は無事だった」

「それを見物して、お前はゆうべ牛込に泊ったのか」

「船河原町の朝吉の野郎は世辞が良いし、あの配偶のお森は馬鹿な愛嬌だ、八さん八さんと下にも置きませんよ」

「馬鹿だなア」

「それに、へっつい横丁のお種は馬鹿に様子が好い、山の手にもあんな娘があるのとか」

「馬鹿野郎」

これは単なる八五郎のザレ言でしたが、これが、思わぬ事件にまで発展しようとは、平次もまた予測しなかったのです。

三

「サア大変ッ、親分」

八五郎の大変が飛び込んだのは、ついその翌る朝でした。

「どうした、八、俺はまだ顔も洗わないぜ」

「牛込の朝吉兄哥から使いですよ、顔なんか構やしません、明日洗ったって」

「どうしたというのだ、人の顔だと思って」

「横笛の兵二郎が殺されましたよ。殺しとなると牛込の朝吉兄哥じゃ手に負えない、銭形の親分をつれてくるようにと、朝吉兄哥たっての頼みで――」

「朝吉の頼みじゃ放ってもおけまい、行くとしようが、ちょっと待ってくれ、殺されたものなら生き返りもしないだろう」