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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁
そこに主人の死骸がおいてあります。
敷いた座布団の上に、胸を匕首に刺されて仰向様に仆れ、そのうえ喉へ止めを刺されております。胸を刺して一気に息の音を止める事は困難ですが、喉笛に止めを刺されては一とたまりもありません。
平次はお勝手へ足を運んで、お徳に訊いて見ました。
「離屋には、総領がいる筈じゃないか」
「生れ付きの片輪が嵩じて、近ごろは身動きも自由でなく、離屋に籠ったきりでございます、もう十五になりますが」
そう言われると、それっきりの事です。
通り一丁目に建てた家は、狭いながらなかなかに実用的で、狭い中庭があり、そこから主人の部屋へも通えますが、お勝手口の方はまったく別になっており、下女のお徳がここへ籠った限り。ここからは容易に入れるわけはなく、二重の締りを距てて、僅かに店の方へも通じます。
総領が住んでいるという離屋は小さいながら別棟になっており、これはお勝手からの通路はありますが、店や母屋とは庭と垣根を隔てております。
平次はこの間取りを念入りに調べ、血だらけの匕首を捨ててはいないかと、物の蔭、戸棚の奥、床下や庭などを見ておりますが、この辺には何んにもありません。