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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁

青空文庫

銭形平次捕物控

一

一

八五郎の顔の広さ、足まめに江戸中を駆け廻って、いたるところから、珍奇なニュースを仕入れて来るのでした。

江戸の新聞は落首と悪刷りであったように、江戸の諜報機関は斯う言った早耳と井戸端会議と、そして年中どこかで開かれている、寄合い事であったのです。

「お早うございます。良い陽気になりましたね、親分」

八五郎といえども、腹がいっぱいで、でっかい紙入に、二つ三つ小粒が入っていると、こんな尋常の挨拶をすることもあります。

「たいそう機嫌が良いじゃないか、――お前の大変が飛び込まないと、――今日は大きな夕立でも来やしないかと、ツイ空模様を見る気になるよ」

「ヘッ、天下は静謐ですよ、――親分におかせられても御機嫌麗わしいようで」

「馬鹿野郎、御直参見てえな挨拶をしやがって」

「親分の縄張り内はろくな夫婦喧嘩もねえが、三輪の万七親分の縄張りには、昨日ちょいとしたことがあったそうで」

「チョイとしたこと――というと」

平次に取っては、八五郎の『大変』よりは、この『チョイとした事』の方に興味を惹かれるのです。

「橋場の金持の息子が、土左衛門になったんで、いっこうにつまらない話で」