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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁
四
「どうぞ」
主人の徳兵衛に案内されて、平次と八五郎は奥の部屋に入って見ました。親類の人達や近所の衆で、家の中はなかなか混雑しております。
仏様の前はいちおう整えられて、線香が部屋一パイに燻ぶっております。
平次はいちおう拝んだ上で、早桶を開けさせました。水死人並みの不気味に膨れた死骸と思いきや、中の死骸は細々と痩せて、左の首筋に牡丹のように開いたのは、お夏の指摘した凄まじい皮下出血です。
死骸には傷の痕はなく、物馴れた平次の眼には、これは溺れたものではなく、首の大動脈を激しく撃たれて、咄嗟に死んだことは争う余地もありません。
四
伊豆屋の店の者をいちおうは調べました。が、これはまったくの無駄骨折りでした。伜の菊次郎の放埒が始まってから、主人の取締りは恐ろしくやかましく、夜分の外出などは思いも寄らず、そのうえ菊次郎は独りぎめの通人肌で、店の者などとは交渉もなく、菊次郎に怨みを持つ者などは想像も出来ないことです。
それに質両替という商売は、多勢の奉公人を必要とするわけではなく、暗くなってから外へ出たのは、下男の元吉たった一人、これは宵のうちに帰って、菊次郎が外へ出たのは、それから大分経ってから、おそらく橋場の渡し舟が停ってずっと後、たぶん真夜中近い刻限だったでしょう。