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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁

青空文庫

六

「ま、飛んだご縁ね」

「ところで、その近づきの印に、気障なようだが、手を握らせてくれ」

「あらまア、そんな事なら、――お安い御用ね、頬っぺたを嘗めさしてくれとでも仰しゃることかと」

お銀が素直に手を出すと、八五郎はその手をムズと握りました。

「ま、痛い、大変な力ね」

「済まねえ済まねえ、ツイ力が入ったんだ。美い女はとくだぜ」

「とくだか災難だか」

「あばよ」

八五郎は桜の土手を、平次の跡を追いました。

「どうした八」

「とんだ役得で、思いきり柔かい手を握って来ましたよ」

「タコがなかったか」

「撥ダコもありゃしません。ありゃ箸より重い物を持ったことのない手ですね」

平次はそれを聞くと小首を傾げました。何やら呑込み兼ねた姿です。

六

「親分、見当はついたようですね」

「いや、まだまだそう手軽には行かない。お前は、お銀の素姓を知っているのか」

「あっしは知りませんが、原の郷に阿星半七郎という、大変な浪人者がいます。もとはお銀の好い人で、今は向島一帯を縄張りにしている侍やくざですが、その男に訊いたらわかるでしょう」

「それじゃ頼むから、お前はそこへ廻ってお銀の前身を訊いて来てくれ」