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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

「火事でドタバタ騒いでいるところを、例の一件やろうというのだ」

「火事はひでえ、何んとかほかに。……火事は兇状でも重い方だ。……火焙りってやつにされるんですからねえ」

「厭か※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

と三十郎はグッと睨んだ。

「という訳でもねえんですが。……」

「厭ならこれだ!」と刀の柄を叩いた。

「嚇しちゃアいけません、何ですい旦那!」

「応というならこっちの方だ」

云い云い三十郎は懐中へ手を入れ、小判を五枚引き出した。

「両方とも金に相違ないが、どっちの金を取るつもりだ」

「そりゃア旦那、山吹色の方をねえ」

「じゃア応か」

「応にしやしょう」

「それよ」

「こいつア」

チャリンと音がして、小判は由蔵の手へ移った。

菊女や足洗主膳に別れ、露路へはいった鵜の丸兵庫は、間もなく桔梗屋の店先へ、みすぼらしい猫の蚤とり姿を、恥ずかし気もなく現わしたが、

「ごめん」

と云って土間へはいり、

「蚤とりましょう猫の蚤とり! これこれ当家に猫がおるであろう、連れておいで蚤を取ってあげる」

こう云って框へ腰をおろし、腰に差していた猫の皮の、巻物のようなのを取り出した。

驚いたのは店にいた女中や、番頭や帳つけや男衆であった。