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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

が、民弥は意にも介せず、朗らかに微笑しちょっと頷き、菊女へも会釈の一揖をしてから、

「耳よりの話聞きましてござるぞ」

と、兵庫と向かい合って座を占めた。

「耳よりの話? 何事でござるな?」

云い云い兵庫は膝を進めた。

「紀伊殿寵愛の萩丸殿が……」

「萩丸殿? ご愛孫じゃな」

「紀伊殿ご愛孫にござります」

「その萩丸殿何んとされました?」

「紀州より江戸表へ出府され、侍臣を連れて物珍らしそうに、毎日江戸中をご見物とか……」

「…………」

「剛愎無比の頼宣卿も、このご愛孫のお言葉とあれば、どのようなことでも聞かれますとのこと……」

「な、かるがゆえにそのご愛孫を、我らの手にて……我らの手にて……そうしてそれを囮といたし、五十嵐殿や紀州表において、捕縛された同志の方々を……」

「なるほど」

と兵庫は頷いた。

「これは妙案、たしかに有効……が、しかし、いかがいたして……」

兵庫はここで打ち案じた。

「萩丸殿、幾歳でしたかな?」

「十八歳かと存じまする」

「十八歳。……ふむなるほど。……とするとまんざらでもない年じゃ」

ここで兵庫は菊女の方を見た。

「ひょっとかすると菊女殿に……」

「はい、何んでございますか?」