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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

……嘉門様の屋敷へ向かった勢、あれへも人を走らせて、戦い中止を知らせていただきましょう」

それぞれへ伝騎が走って行った。

青塚の郷と犬帰村との、境いをなしている峠道の、林の中に三十郎は、菊女を前にして坐っていた。

二頭の馬は木につながれ、ノンキそうに草を食べている。

三十郎に追われ追われて、菊女はここまで走って来たが、ここですっかり精根つからせ、とうとう落馬してしまった。

すぐに三十郎は馬から飛び下り、菊女を捕え刀をもぎとり、両腕を縛めてしまったのである。

で、菊女は観念して、縛られた腕を背に廻したままで、今寂然と坐っている。

髪は乱れ衣裳も乱れ、顔色蒼ざめた菊女の姿を、木洩れの月光の照らしている様は、いたいたしくも凄艶であった。

(悪かアないな)

と三十郎は思った。

(まだ手つかずの処女というやつだ。海千山千の梶子と異って、全く別の美しさだ。……これをギュッと退治する。悪かアない!)

とそう思った。

夜烏がどこかで啼いている。

病葉が風に散るのだろう、肩の上へ落ちて来た。

「菊女殿」

と三十郎は云った。

「もうこうなっては仕方ござらぬ、青塚の郷も明暦義党も、萩丸様も何も彼も、一切忘れておしまいなされ。