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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁
また三人は畳の上へ、指で文字を書きはじめた。
三十郎はニヤリとした。
――それだけの会話を聞いたことによって、彼三十郎の知ったことといえば、入谷田圃で太刀を合わせた武士が、鵜の丸兵庫という武士だということと、萩丸を誘拐した美しい娘が、菊女という女だということと、明後日兵庫が江戸を立って、紀州に向かうということと、その目的が同志の一人を、奪い取ることだということと、そうして菊女という美しい娘が、萩丸君を介抱しながら、これも明後日江戸を立って、紀州へ向かうということと――大略こういうことであった。
(民弥をここまでつけて来て、何んという素晴らしい収穫を得たか!)
三十郎はゾクゾクした。
(図太くもっと忍んでいて、一切立ち聞きしてやろう)
こう思って彼はなおしばらく、八ツ手の葉蔭にかくれていた。
民弥の声が聞こえて来た。
「申し上げましたとおり江戸を立って、私も明後日京へ参ります。……と、我々三人の者が同日に旅へ出るという次第。……では旅の間何んとかいたして、互いに連絡とりたいもので。……」
「さようさようそれがよろしい」
鵜の丸兵庫がこう云った。
「では旅籠につきました時、こういたそうではございませんか」